野球ゲームを作ろうとしたとき、一番簡単な方法は「ランダムに球種を決める」ことだ。乱数を1行書けば、見た目は十分に機能する。でも私はそれをしなかった。ランダムなら、プレイヤーは「読む」ことができない。読めないゲームに、駆け引きは生まれない。

魔球BATTERに登場する50人以上のピッチャーはそれぞれ、得意球種(specialties)・速度係数(speedMod)・ブレ幅(jitterMod)・そして必殺球(signaturePitch)を持っている。必殺球とは「N球に1度、必ずこの球を投げる」という定義だ。これがあるだけで、プレイヤーはピッチャーを観察しながら「次はくるかも」と身構えることができる。

クロノスと風魔小太郎という極端な例

クロノス(称号:時の神)は2球に1度、停止球を確定で投げてくる。対戦すれば1球目か2球目に必ず止まる。規則性がわかっていても、その間合いに慣れるのが難しい。一方「風魔小太郎」は全タグの球種を操り、速度係数1.5倍で投げてくる。予測できないのではなく、対応の幅が広すぎて追いつけない。この2人は同じ「強い」でも、まったく異なる強さを持っている。

見えない設計が体験を作る

開発者キャラとして、称号「神」を持つピッチャーも実装した。これは自分が遊んでいて「本当に強くしてやろう」と思って作ったキャラで、specialtiesにすべての球種を入れ、signaturePitchの頻度を最大にしてある。正直、バランスを壊しかねない存在だ。それでも入れたのは、「伝説のピッチャー」を体感できる場所を作りたかったから。

50人のピッチャーが持つ複雑なパラメータは、プレイ中に画面に表示されない。でも、その見えない設計がプレイヤーの「あのピッチャーはこう来る」という感触を作っている。それが、ゲームをただの作業ではなく読み合いにしている。